泡影の姫
花火大会以降、私は湊と連絡を取っていない。
 
音信不通。
 
その日々の中で、私は溺れないように慎重に泳ぎながら考える。
 
湊の報われなかった気持ちは、一体どこに向かうのだろう?
 
泡になって消えることのできない、その想いを抱えて。
 
今、湊は何を思っているのだろう?
 
笑っているだろうか?
 
泣いているだろうか?
 
未完成だった曲は、今どれくらい湊の言葉で綴られているのだろう?
 
今、湊は何をしているのだろうか?
 
今、湊は誰のことを想っているのだろうか?
 
会いたい。
 
ただ、湊に会いたいと。
 
そんなことを考える。
 
だけど、私にできることは、きっと待つことだけで。
 
寂しい、とか。
 
切ない、とか。
 
そんな気持ちを抱えながら、それでも私は湊のそばにいることを選んだ。
 
選ぶことができた。
 
そんな今が、私は割と好きみたいで。
 
やらなければいけないことを、一つ一つ積み重ねながら、湊からの連絡を待つ日々。
 
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