泡影の姫
湊は少し緊張した面持ちで、大きく深呼吸をする。

「うし。はじめるかっ」

それを合図に湊は大音量で、音楽を奏で出す。

室内にいる、彼女に曲を届けるために。

湊の歌声が、会場内に響く。

一体、何が起きているのかと、式場から中庭に向けて人が顔を覗かせる。
あっと言う間に人だかりができ、そのギャラリーの中に彼女の姿を見つけた。

今日の主役。
ウェディングドレスをまとった彩愛さんは、目を見開いて、湊を見つめる。

「湊っ」

彼女は湊を呼ぶ。
呼ばれた彼は、少し笑って。
歌うことで、彼女に応じる。

湊が奏でるその曲は、

優しくて、

切なくて、

そして、幸せを願うもので。

とても、彼らしい曲で。

響き渡る湊の歌声と。

空の青と。

芝生の緑と。

ドレスの白。

それら全てが、美しく。

とても印象的だった。
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