泡影の姫
湊が最後の1音を弾き終わり、短い1曲が終わりを迎える。

「湊、来てくれたんだね」

ウェディングドレス姿の彩愛さんは、とてもキレイで。
泣きそうな顔をしていたけれど。

湊に話かけるその声は、

優しくて、幸せに満ちていた。

「式には、出てくれないの?」

「無理言うなって。こんな格好だぞ?」

ジーンズにTシャツ。
とても結婚式にふさわしい格好とは言えない。

「一回しか、言わないからな」

湊はそう前置きをして、

「幸せに、な。姉さん」

精一杯のエールを送った。

それが、湊が選んだ答えで。

湊が選んだ、家族の形。

頷く彩愛さんを見ながら、

「瑞希、撤収するぞ!!」

泣きそうになる私の手を引っ張って湊は駆け出す。

その顔は晴れ晴れとしていて。

未来に向かって進むその姿を見て、

カッコいいじゃんって。

そんな風に思ったのだ。

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