泡影の姫
泳ぎたい。
それは、私の中でもっとも純粋で貪欲な欲望だった。
一度湧き上がった欲望をとどめる方法を私は知らない。
仮にあったとしても、そうしない。
考えるよりも先に、体が動いた。
Тシャツに手をかけ、ジーンズを脱捨てる。
飛び込み台に立つ。
ドクン、と一つ大きく心臓が鳴った。
静寂は、大会のそれに似ていた。
緊張感と、それをも上回る高揚感。
私はずっと、これを求めていたのかもしれない。
ピストルの号令もなければ、観衆のざわめきもない。
水着もゴーグルもない。
ただ静かな月明かりの下で、私は息を吸い、そして暗闇の中に飛び込んだ。
水の中は一寸先すら見えない。
足の代わりに腕の力でカーバーし、無理のない範囲で足をバタつかせ、25mを泳ぎきる。
泳げた。
ああ、私はまだ泳げるんだ。
折り返しでターンをし、また泳ぐ。
ただただ欲望のままに泳ぎ続ける。
速く、もっと速く。
いくらそう願っても、もう以前のように体は動かない。
それでも楽しかった。
私はずっと泳ぐことが好きだった。
今でもそれは変わらない。
考えてうだうだしている時間が、なんともったいなかったことだろう。
これだけで、よかったんだ。
なんで気づかなかったんだろう?
今更私の水泳中毒が、治るわけなんかないんだって。
それは、私の中でもっとも純粋で貪欲な欲望だった。
一度湧き上がった欲望をとどめる方法を私は知らない。
仮にあったとしても、そうしない。
考えるよりも先に、体が動いた。
Тシャツに手をかけ、ジーンズを脱捨てる。
飛び込み台に立つ。
ドクン、と一つ大きく心臓が鳴った。
静寂は、大会のそれに似ていた。
緊張感と、それをも上回る高揚感。
私はずっと、これを求めていたのかもしれない。
ピストルの号令もなければ、観衆のざわめきもない。
水着もゴーグルもない。
ただ静かな月明かりの下で、私は息を吸い、そして暗闇の中に飛び込んだ。
水の中は一寸先すら見えない。
足の代わりに腕の力でカーバーし、無理のない範囲で足をバタつかせ、25mを泳ぎきる。
泳げた。
ああ、私はまだ泳げるんだ。
折り返しでターンをし、また泳ぐ。
ただただ欲望のままに泳ぎ続ける。
速く、もっと速く。
いくらそう願っても、もう以前のように体は動かない。
それでも楽しかった。
私はずっと泳ぐことが好きだった。
今でもそれは変わらない。
考えてうだうだしている時間が、なんともったいなかったことだろう。
これだけで、よかったんだ。
なんで気づかなかったんだろう?
今更私の水泳中毒が、治るわけなんかないんだって。