泡影の姫
救急車に乗せられてからの記憶は曖昧で、医師の説明はたぶん理解することを拒否していたみたいでよく思い出せない。
負荷のかかり方が悪かったらしく左脚の皿が粉砕、解離した。

手術を受けたが、それはずれた皿を元の位置に整形しただけで、もう同じようには動かないだろうといわれたらしい。

それでも諦めたくなくて大丈夫だって言い聞かせてリハビリを頑張った。

頑張っていればきっと元通りになると信じていた。

そのかいあってか、日常生活に支障がない程度までには回復を果たしたが、それが私の限界だった。

奇跡なんか起こらなかった。

努力なんかじゃ超えられなかった。

世の中にはどうしようもないことがあるのだと、突きつけられた現実は、私の心をズタズタに切り裂いた。

もう私の足は激しい運動には耐えられない。

それは、私にとって死亡宣告と同じだった。
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