泡影の姫
私が一体何をしたというのだろう?

意味を求めても仕方がないし、答えが出たところでこの脚の爆弾は取り除けない。

はっきりしていることは『私の世界』はもう終わってしまったということ。
そして水泳選手としての私の居場所はこの世のどこにもなくなったという絶望だけ。

悔しくて、やりきれなくて。

あるはずだった自分の未来への未練を簡単に絶つことなんかできなかった。

まだこれからもっといい記録が出せたはずだった。

まだもっと早く泳げたはずだった。

私は泳ぐことでもっともっと上に行きたかった。

私が望んだことは、たったそれだけの事なのに。

それは私が望んではいけない望みだった?

私には分不相応な願いだった?

たとえそうだったとしても、その望みを絶った誰かが憎い。
探し出して八つ裂きにしても、まだ足りない。でもそれができっこないのも分かっていた。

もしその誰かが捕まったとしても、たいした刑にはならないだろうし、法で裁かれても私の気は晴れない。

きっと誰にもわからないだろう。
こんな価値のない身体だけが残った私の気持ちなんて。
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