泡影の姫
スポーツ科での居心地の悪さはなくなったが、代わりに普通科での好奇の視線にさらされる毎日。
まずはこれに慣れることからはじめないといけないみたいだ。
夜の街の無関心さが懐かしくて、私は思わず苦笑する。
誰かの視線が気になるのなら、もっと遠く、誰も私のことを知らないような学校へ転校するという手だってあった。
けれど、もしこの街から遠く離れたら、もう二度と湊に会えない気がする。それだけが私を引き止めた。

人を一人見つけ出すには、この街はあまりに広すぎた。

湊は、夜の闇に飲まれてしまったのかもしれない。

そんなことまで考えるようになっていった。
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