泡影の姫
『……ちょっといろいろあり過ぎて疲れたんだな』

頭の中で湊の歌が流れ出す。あの悲しくて、切なくて、キレイな歌が私を包み込むようにメロディーを奏でる。

そう、疲れちゃっただけなんだ。

私も。

そして目の前にいる彼女も。

『泣いとけ』

こんなところで泣かないよ、と心の中で苦笑しながらゆっくり深呼吸を繰り返す。

大丈夫。
大丈夫。

呪文みたいに繰り返して目を開けた時には、私の中のどす黒かった感情は身をひそめ、代わりに冷静さが顔をのぞかせていた。

『どうすればいいのか』

そのもう答えを今の私は知っている。
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