泡影の姫
「姉…。苗字違うけど?」
「それは、私…結婚してるから」
私といくつも変わらないようなこの人の左の薬指には何も嵌められていない。
彼女のその場を取り繕うようなセリフが私を急速に苛立たせていく。
彼女という存在の違和感。
「結婚して出て行ったお姉ちゃんが、どうしてそんなに湊に構うの?」
すでに空になってしまったグラスの中の氷で遊びながら私はそんなことを口走る。
本当は、他人の家庭事情なんかみじんも興味ない。
ただ、思ったのだ。
沸き上がってきた感情を心の奥深くまで鋭くえぐれる武器に変えて、この人をズタズタになるまで傷つけたいと。
なんでそんな風に思ったのか分からない。
今までの私だったら、醜く沸き上がってくる感情を全部自分の檻の中につなぎとめておけたのに、まったく自制がきかない。
「それは……家族、なんだから当然のことで。だから、私は湊を…あそこは、湊の家だから」
途中で不自然に切れてしまった言葉を探すように視線を落とした彼女を残し、私は飲み物を注ぎに行く。
何を飲もうか考えながら、結局またメロンソーダを押してしまった。
何が入っているのか分らない緑色の液体が、小さな泡をいくつも作りながら注がれていく。
体に悪そうな綺麗な色を眺めて、私は席に戻った。
席に戻ると彩愛さんのアイスコーヒーが少しだけ減っていた。
彼女もさっきの私みたいに上がってきた言葉を喉の奥に流し込んだのだろうか?
そんなことを考えた。
「それは、私…結婚してるから」
私といくつも変わらないようなこの人の左の薬指には何も嵌められていない。
彼女のその場を取り繕うようなセリフが私を急速に苛立たせていく。
彼女という存在の違和感。
「結婚して出て行ったお姉ちゃんが、どうしてそんなに湊に構うの?」
すでに空になってしまったグラスの中の氷で遊びながら私はそんなことを口走る。
本当は、他人の家庭事情なんかみじんも興味ない。
ただ、思ったのだ。
沸き上がってきた感情を心の奥深くまで鋭くえぐれる武器に変えて、この人をズタズタになるまで傷つけたいと。
なんでそんな風に思ったのか分からない。
今までの私だったら、醜く沸き上がってくる感情を全部自分の檻の中につなぎとめておけたのに、まったく自制がきかない。
「それは……家族、なんだから当然のことで。だから、私は湊を…あそこは、湊の家だから」
途中で不自然に切れてしまった言葉を探すように視線を落とした彼女を残し、私は飲み物を注ぎに行く。
何を飲もうか考えながら、結局またメロンソーダを押してしまった。
何が入っているのか分らない緑色の液体が、小さな泡をいくつも作りながら注がれていく。
体に悪そうな綺麗な色を眺めて、私は席に戻った。
席に戻ると彩愛さんのアイスコーヒーが少しだけ減っていた。
彼女もさっきの私みたいに上がってきた言葉を喉の奥に流し込んだのだろうか?
そんなことを考えた。