泡影の姫
「どこだよ。ここ」
「私の高校」
休日の高校に来るのは、いつ以来だろう?
選手だったころは当たり前のように自主練習に来ていた。
休んでいる暇なんて一秒だってなかった。
どこにいても、
何をしていても、
私の手は水を掻くために存在し、私の足は水を蹴るために存在していた。
だけどもう、それはずいぶんと昔の話のように感じる。
実際はまだほんの数カ月しかたっていないのに。
それは私の最近が目まぐるしすぎたせいなのかもしれないけれど。
「って、俺は部外者だぞ」
そのまま湊の手を引いて中に入ろうとすると、湊は少し腕に力を込めて抵抗を示した。
「不法侵入には慣れてるでしょ?」
私だって今日は私服だ。
それなりに顔が割れている自信はあるけれど、生徒と認識してもらえない可能性だってある。
それに休日校内に教員はほとんどいないし、出くわしたとしても逃げる手立てはいくらでもある。
ちょっと前まで生徒指導から逃げ回っていた私だ。
のらりくらりとやり過ごす自信ならある。
「どうなっても知らねぇぞ」
「別に。どうなってもいいよ」
「あのなぁ」
呆れたような湊の言葉に私は精一杯の笑顔を向ける。
「来て。見せたいものがあるの」
湊の手をぎゅっと握ったまま私は裏門をくぐる。
これ見よがしに大きなため息を吐いた湊は諦めたようについてくる。
「私の高校」
休日の高校に来るのは、いつ以来だろう?
選手だったころは当たり前のように自主練習に来ていた。
休んでいる暇なんて一秒だってなかった。
どこにいても、
何をしていても、
私の手は水を掻くために存在し、私の足は水を蹴るために存在していた。
だけどもう、それはずいぶんと昔の話のように感じる。
実際はまだほんの数カ月しかたっていないのに。
それは私の最近が目まぐるしすぎたせいなのかもしれないけれど。
「って、俺は部外者だぞ」
そのまま湊の手を引いて中に入ろうとすると、湊は少し腕に力を込めて抵抗を示した。
「不法侵入には慣れてるでしょ?」
私だって今日は私服だ。
それなりに顔が割れている自信はあるけれど、生徒と認識してもらえない可能性だってある。
それに休日校内に教員はほとんどいないし、出くわしたとしても逃げる手立てはいくらでもある。
ちょっと前まで生徒指導から逃げ回っていた私だ。
のらりくらりとやり過ごす自信ならある。
「どうなっても知らねぇぞ」
「別に。どうなってもいいよ」
「あのなぁ」
呆れたような湊の言葉に私は精一杯の笑顔を向ける。
「来て。見せたいものがあるの」
湊の手をぎゅっと握ったまま私は裏門をくぐる。
これ見よがしに大きなため息を吐いた湊は諦めたようについてくる。