泡影の姫
一度はもう自分は死んだのだと思い込み、灰を噛むような毎日をただ淡々と消化していた。
でも今は、命が惜しい。
事故にあったあの時。
いっそのこと一思いに殺してくれればこんなに苦しまなくてもよかったのにと思っていた私が、
今は生きるために必死で足掻いている。
私は、ここでは死ねない。
水の中なら呼吸方法が分かるはずだったのに、今は酸素を体に取り入れるすべが分からない。
力を入れたら沈んでしまうのに、頭が真っ白になって何も考えられなくなる。
私は、自分の世界だった場所で溺れたのだ。
そう思った瞬間に、強く腕を引っ張られた。
あっと思う間もなく水から引き上げられる。
「げほっ、けほっ、」
水が気管に入ったことでむせた。
何度も何度も呼吸を行い、肺に酸素を送り込む。
溺れていた時間はとても短かったから、さして水を飲むことはなかった。
呼吸が整って顔を上げれば、すぐそこに湊の顔があった。
彼の周りは、まるでそこだけ雨が降ったみたいに水たまりができていて、その先をたどれば湊の髪や服からしずくが伝っていた。
異変に気付いた湊がプールサイドに引き上げてくれたのだと、ようやく理解が追いついた。
でも今は、命が惜しい。
事故にあったあの時。
いっそのこと一思いに殺してくれればこんなに苦しまなくてもよかったのにと思っていた私が、
今は生きるために必死で足掻いている。
私は、ここでは死ねない。
水の中なら呼吸方法が分かるはずだったのに、今は酸素を体に取り入れるすべが分からない。
力を入れたら沈んでしまうのに、頭が真っ白になって何も考えられなくなる。
私は、自分の世界だった場所で溺れたのだ。
そう思った瞬間に、強く腕を引っ張られた。
あっと思う間もなく水から引き上げられる。
「げほっ、けほっ、」
水が気管に入ったことでむせた。
何度も何度も呼吸を行い、肺に酸素を送り込む。
溺れていた時間はとても短かったから、さして水を飲むことはなかった。
呼吸が整って顔を上げれば、すぐそこに湊の顔があった。
彼の周りは、まるでそこだけ雨が降ったみたいに水たまりができていて、その先をたどれば湊の髪や服からしずくが伝っていた。
異変に気付いた湊がプールサイドに引き上げてくれたのだと、ようやく理解が追いついた。