泡影の姫
「病院、行ってください。足が腫れてます」

「うーん、やっぱり行かないとまずいかな?」

足を触る。
確かにそこはすでに腫れ始めていた。
激しい運動の禁止を破ったのだから仕方ない。

「あのね。私、後悔してる。足がよかった時、相葉さんに勝負挑まなかったこと、後悔してる。だから今日、一緒に泳げてよかった。本当に、よかった。ありがとう」

こんな風に私を怒ってくれる彼女をもっと早くに理解していたら、友達になれていたかもしれない。
今更ながらそう思う。

「……立てますか?更衣室まで肩貸します」

「ありがとう」

もう一度お礼を言うと彼女の肩を借りて何とか立ち上がった。
足は、鉛のように重かった。

「湊、外で待ってて。話、聞くから。ちゃんと、聞くから」

私たちのやり取りを黙ってみていた湊にそう声をかけ、私は更衣室に向かって足を引きずって行った。
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