泡影の姫
「ねぇ、ついでだからもう一ヶ所付き合いなさいよ」
「その足でどこに行く気だよ」
「病院。歩くの無理そうだからタクシー呼ぶわ」
携帯電話を取り出すと、私は慣れた動作でタクシーを呼んだ。
退院後、私の携帯電話にはタクシー会社の番号が登録された。
共働きの両親が、日中私を病院に連れて行くことができないからだ。
携帯電話を仕舞うとゆっくり歩き出す。
湊は私の荷物をなかば取り上げるように掻っ攫い、隣をゆっくりとした歩調で歩きだした。
校門までの道のりが遠い。
「先生怒るかなぁ」
主治医の松永先生の顔を思い浮かべてちょっと病院に行きたくなくなる。
松永先生は、コーチ並みにスパルタで、容赦なく言葉攻めにする。
今のところ私が松永先生に口げんかで勝ったことはない。
私は激しい運動の禁止を破った。
それもものすごく負荷のかかるやり方で破った。
きっと水が溜まる。
私はこれから松永先生に怒られるだろうか?
いや、怒られるならまだいい。
にっこりとさわやかな笑顔を浮かべながら、表情と全く合わない嫌味を言われ、これ見よがしにため息でもつかれたら本気で凹む。
入院中に何度か体験したけれど、背筋が凍るくらい怖かった。
とても医者とは思えない。
「その足でどこに行く気だよ」
「病院。歩くの無理そうだからタクシー呼ぶわ」
携帯電話を取り出すと、私は慣れた動作でタクシーを呼んだ。
退院後、私の携帯電話にはタクシー会社の番号が登録された。
共働きの両親が、日中私を病院に連れて行くことができないからだ。
携帯電話を仕舞うとゆっくり歩き出す。
湊は私の荷物をなかば取り上げるように掻っ攫い、隣をゆっくりとした歩調で歩きだした。
校門までの道のりが遠い。
「先生怒るかなぁ」
主治医の松永先生の顔を思い浮かべてちょっと病院に行きたくなくなる。
松永先生は、コーチ並みにスパルタで、容赦なく言葉攻めにする。
今のところ私が松永先生に口げんかで勝ったことはない。
私は激しい運動の禁止を破った。
それもものすごく負荷のかかるやり方で破った。
きっと水が溜まる。
私はこれから松永先生に怒られるだろうか?
いや、怒られるならまだいい。
にっこりとさわやかな笑顔を浮かべながら、表情と全く合わない嫌味を言われ、これ見よがしにため息でもつかれたら本気で凹む。
入院中に何度か体験したけれど、背筋が凍るくらい怖かった。
とても医者とは思えない。