泡影の姫
「足、完治したんじゃないのかよ!?」

隣にいた湊は私に当然の疑問を投げかけた。
まぁ、私の足は見かけ上は治っていると言えなくもない。

だが、今は別だ。

「ん~たいしたことないといいよね~。っていってもすでに関節腫れてるしなぁ」

私が折った部位は簡単には治らない。
階段の一番上から落ちたのだ。
ただの女子高生の私がとっさに受け身なんて取れるわけもなく、コンクリートに叩きつけられた。
骨の砕ける音と、私を取り囲む野次馬のざわめきが今も頭に焼き付いている。

若いから大丈夫なんて嘘で、痛いものは痛いし、リハビリも辛かったし、今だって時々疼く。

普通に生活できれば、それは幸せなことなのかもしれない。
私は歩くための両足を持っている。
もう同じように曲がらないかもしれないと言われた膝だって曲げることができる。

それでも、もっともっとと望んでしまうのは、我儘なんだろうか?

思いっきり泳ぎたいと思うのは、願ってはいけないことなんだろうか?
< 96 / 157 >

この作品をシェア

pagetop