泡影の姫
「お前……こうなるって分かってるなら加減しろよ!!」

「だって、全力じゃなきゃ、意味ないじゃん!!」

私はもう眼をそらさない。

私の本気を見せなきゃ、絶対に湊に伝わらない。

あの日、たとえギターを弾くための両腕を無くしても歌い続けるといった湊の本気の「好き」に負けないくらい、全力で私の「好き」を見せなくちゃ、きっと湊は振り向いてくれない。

この人を振り向かせるには、それくらいのエネルギーが必要なんだ。

「何、泣いてんだよ?」

「泣いてなんか、ないんだから」

にじむ視界を意識しながら、精一杯強がる。
睨みつけるような私の視線を真っ向から受けた湊はバツの悪そうな顔をしていた。

「なんで、俺のためにそこまでするんだよ」

私は涙をぬぐう。
湊の前では小さなプライドさえもなくなってしまう。
素の私がここにいる。
< 97 / 157 >

この作品をシェア

pagetop