毒の石
「鍵、持ってるから」
「えぇ!?なんで…!?」
そんなことを考えていると男がポケットからスッと鍵を取り出した。
演技を続けるあたしを後目に男はカチャカチャと鍵を開ける。
「はい、どーぞ。死ぬほどからかわれてくればいいさ」
「うわ…!凄い!ありがとうございます!」
ボソッと呟いた言葉は聞こえないフリをして満面の笑みでそう返してやる。
そして
「完璧遅刻だー!」
と声を上げながら校舎内へと走り出した。
「………はー…ウザいわー…あんなんがNo.2とか笑える」
下駄箱で靴を履き替え職員室に向かいながらそう呟いたあたしは首をコキッと鳴らす。
「肩凝ったーマジ怠いわ」
ああいうふざけた野郎の相手が一番疲れる。
変な癖があるから扱いやすく扱いづらい。
なんて中途半端な連中なんだろう。
「失礼します」
グチグチ言っている間に着いた職員室を前に少し深呼吸をし、3回ノックをしてからそう言う。
「遅くなってすみません、今日からお世話になります岼埜春(ユリノハル)です」
岼埜春。
当然偽名、一文字も合ってない。
いや、一文字くらい合ってるかもしれないが。
「おまえが岼埜か、転入初日から遅刻なんてどうした?」
職員室内を見渡して挨拶をしながらそんなことを考えていると一人の男が話しかけてきた。