毒の石
腕を捕まれたとき男の力が強すぎたようで、あたしは今男と唇が触れ合う1cm手前で話している。
だからピアスの穴もバレてしまった。
瞬間男はハッとして手を放した。
少し顔が赤いのは自分のしでかしたことへの羞恥か女に免疫がないのか…。
まぁ前者だろうな。
「で、なに」
あたしの言葉に男はきょとんとした。
「あたしを逃がさないってことは脅すんだろ?早くしろよなんでもやってやるから」
机に座り足を組んでそう言うと男は驚いたような顔をした。
「…脅すとか考えてなかった…」
「はぁ?じゃなんで引き止めたんだよ、意味わかんねぇ」
男の言葉に呆れて溜息を吐いたあたしに慌ててなにか言おうとする男。
だがなかなか思いつかないらしい。
「なんで腕を掴んだ?なにか言いたかったんだろ?」
仕方なく冷静になるよう優しく話しかけると男はまた驚いた顔をしてからゆっくりと深呼吸をした。
「初めて、だった…俺が幹部って知ってるのに、そんな態度の女…だから、なんでそんな態度なのか、聞きたかった…」
あぁ、確かこいつ無口で無表情って有名な奴だったな。
No.1の連中は女は性欲処理のための道具としか思ってないってのも有名な話だったなそういえば。
まぁ盤条然りあの手この手で媚びを売ってくる奴が殆どなんだろう。
「しかも脅すとか…そんなのおまえが初めてだから…」
「おまえ無口で無表情ってただ単に喋るのが苦手、表情に出すのが苦手なだけだろ。これだと他の連中の話も信憑性に欠けるな…調べ直しか…?」
ぶつぶつ言っていると急に視界が変わった。
何故かあたしの上に男、その先には天井。
………あたしは何故組み敷かれてるんだ?
「調べるってなに?俺たちのこと探ってんの?」
その目には若干の失望が見えた。