毒の石
「なにを考えてんのか知らんが同じ学校に暴走族がいるか、いるならどんな族か、それくらい調べるのは当たり前だろ。それが銀狼を探してる連中ともなれば余計にな」
「銀狼…そういえば転入してきた…」
男はまたハッとしてあたしから離れた。
…こいつ自分でどんどん話を逸らしていきやがる。
なんて面倒な男だ…。
「そーだなー確かに転入してきたよ」
「どう、だった…?おまえ一緒に転入してきたんでしょ…?」
自分の目で見る勇気はないのかあたしにそう聞くこいつは果たして気づくかな…?
「自分の目で確かめて来い。もしも、もしもだ、なにか思うところがあったらここに戻ってこい。待ってるから」
気づいたらあたしがあの銀狼だと、正体を明かしてやる。
あたしの言葉に意を決したように扉に向かう男。
「…ここ、俺が使うって皆知ってて…だから…誰も来ない…だから、だから、待ってて…」
懇願するような目で言う男にフッと笑ってみせる。
「当然だ。待ってると言ったのはあたしだからな、約束だ。ちゃんと戻ってこい」
そう言うと男は嬉しそうに駆け出した。
「居場所、ね…ないんだろうな、あいつにも」
あたしのそんな呟きは天井に吸い込まれていった。