毒の石
「本物じゃ、なかった…」
「そうだろうな」
不敵に笑って頷くあたしに透夜は驚きの声を上げた。
「なんで…?」
抱き合ったままだと話し難いな…。
「透夜、いったん離れろ。こういうことはちゃんと顔合わせて話さねぇとな」
あたしの言葉に素直に従う透夜の頭を撫でて口を開く。
「透夜はなんで偽物だってわかった?」
「オーラというか…雰囲気が違う。顔も髪もあんなじゃない。銀狼はもっと綺麗な顔で綺麗な銀髪だった。あんなに傷んだ髪じゃない」
「そこまでわかるか…透夜、おまえ銀狼に会ったことあるな?」
透夜の的確な返答に一つ思い当たったあたしはそう透夜に訊く。
「え…会った、っていうか…偶然見かけたんだ、銀狼の喧嘩してるとこ…」
「やっぱりか…おまえあんとき隠れてた男だな?」
フッと笑って透夜に言うと透夜は訳が分からないというようにあたしを見つめた。
「よく見てろ」
あたしはそう言ってウィッグと眼鏡を外した。
「え、あ……銀、狼…」
あたしの本当の姿を見て驚きを隠せないらしい透夜は口をパクパクさせなにかを言おうとしていた。
「透夜、落ち着け。ほら、深呼吸してみろ」
優しくそう言うと透夜はゆっくり深呼吸をしてあたしを見つめた。
「………」
透夜はもう一度なにか言おうとしたが何故か口を閉じてしまった。
「透夜?」
「………ぃ」
呼びかけると小さくなにかを呟く透夜。
なんとか聞き取った言葉にあたしは
「あ…」
と声を上げた。