毒の石
「どうかした?」
「いや…あたしな、裏の世界で生きてんだよ。透夜の言ってたことはそのせいだと思う」
不思議そうに首を傾げる透夜に苦笑いしながら言うとポカンとした顔をした。
「表を白とするならあたしは完全に黒だ。一応学歴のために学校は通うけど、それも黒で舐められないための手段にすぎない」
「俺は…俺たちは、灰色だ…白でも黒でもない…」
あたしの発言に顔を伏せて言った透夜。
確かにそうだ。
暴走族は裏に入りきれず表にも染まりきれないでいる中途半端な存在。
だから透夜の言っていることはよくわかる。
でも…
「それでいいんだよ。その年で裏か表か決める必要なんてない」
フッと笑ってそう言うと透夜はこくりと頷いた。
「透夜、あたしはちゃんとおまえを見て、信じるよ。
だからあたしのことは誰にも言わないでくれ」
もう大切な奴が死ぬのも、誰かに捕まるのも御免だから。
今まで誰とも関わってこなかったのに、この短時間で大切な奴ができてしまったから。
もう二度と大切な奴を死なせはしない。
そのためには透夜にも協力してもらわなければならない。
透夜の命を守るためだから。