毒の石
そう、今のあたしならあれしきの鎖、あれしきの男、どうにでもできるのに。
あんな苦痛受けなくて済むのに…!!
昔のあたし程無力でなにもできない、弱いだけのものはいない。
どうしてあの人が目の前で倒れたときに力が出なかった。
どうしてあの人が死ぬ前に行動できなかった。
どうして、恐れるだけでなにもしなかった…!!
幾度となく後悔した、そんなくだらないことを。
今更なにを思っても遅いというのに。
力なく鎖に捕らえられたままでいると、女の子、否、昔のあたしはいつの間にかまた成長していた。
約二年、約二年もの間あたしはあいつに、あいつらに監禁されていた。
その二年が過ぎたのだろう、目前では少し老けたあの男が昔のあたしを見て汚い顔で笑った。
あの顔だけは忘れない、忘れられない。
だってあのときあいつは…
「……、おまえに良い知らせを持ってきたぞ。とうとうあいつが、……がし」
「言うなぁぁぁあぁぁ…!!!」