月華祭
一 混沌神復活
「ここでお別れだ」
しんと静まり返る森の中、確固たる男の声がした。
「祝福の言葉を……」
哀しみを押し殺した女の声で、神に対する保護を求める呪文の詠唱が続く。
しばらく唱えられた声が途切れ、何かをそっと地面に置いた気配がする。
「愛し子よ、アルテマの人々を頼むぞ」
男の声が暗闇の中、地面に置かれた存在へ掛けられた。
そして、傍らの人影の肩に手をやり、その場から立ち去っていく。
月華神の加護たる月が出ていない、暗き森でのささやかな出来事であった。

そして、時が過ぎ………………
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