裏ヤン先生に愛されます
「しかも、桜尾さんは貴方が目の前で事故にあったことも知っています」
「…そう。そうなんだ…。じゃあ、貴方だけに言うけど、先月記憶戻ったのよ」
「…え」
その言葉に彼女の瞳を見つめた。
「なぁーんか、思い出しちゃったら。簡単に彼のとこに会いに行けなくって。
それにさ、今君と付き合ってるんでしょ?
だったら許嫁なんだし、後で言えばいいやって思って」
彼女の言葉は、内気な意味には見えない。
だから記憶が戻っているとすぐに分かった。
「それでさ。キミにも口止めしといて欲しいんだよねぇ。
狼ってさ、うちがいなきゃほんっとうに昔から駄目な子でね」
そういうと、懐かしげに微笑んでいた。
「でも…うちも好きだったのよ。ずっと。だから、事故ったときには、目の前真っ暗でね。
死ぬなら、彼がまた恋愛を誰かに出来るように願ったわ。
だけど記憶喪失で目覚めたら…、もう周りが分からなくて」
「でも、今はもう思い出してるんですよね?
だったら会いに行っても…」
「うち、記憶喪失中、他の男と付き合ってたのよ。それなりの恋愛をね」