裏ヤン先生に愛されます
彼女は、あいらっていうそうだ。
懐っこい顔のくせに、警戒心マックス。
俺と話したときもそうだった。
その彼女と話したきっかけは、向こうから話しかけてきたことだ。
「あの…昨日の人ですよね?」
「あぁ」
その声と、仕草。
どこも麻綾に似てなんかいないのに。
俺は彼女を被せてみていた。
「…俺に堕ちればいいんだよ」
自分に黒いものが浮かんだ気がした。
そして付き合いがスタートして、俺等の毎日も始まった。
彼女が家に来るのは頻繁で、俺もそれが当たり前だと思っていた。
(美味しいご飯とか作ってくれるし、俺の事も理解しようとしてくれる)
それがたまらなく、嬉しかった。
一人ぼっちの俺にとって、温かい日差しを受けたみたいだ。
だけど家庭事情を聞くに連れ、悲しみも知った。
(…両親がほぼいない)
俺の家と似ていて、両親は離婚をした。
あの辛い俺の日常を、普通の日々として返して欲しいものだ。
そんな愚痴も段々、彼女に打ち明け、そして心を開け放った。