裏ヤン先生に愛されます
結婚を誓って幾日。
俺等はいつも通り、放課後一緒に帰っていた。
他愛のない会話を弾ませながら。
俺は小さい頃から、耳が聞こえずらい。
その点、麻綾はとても耳はいい。
また普通に、何気ない顔をしていた。
だけど、儚い命は一瞬で散ってしまった。
俺が車のキューブレーキに気づいたのは、麻綾に押されてからだ。
突然、恐怖で満ちた顔をして、俺を突き飛ばした。
その時振り返ると、彼女の姿は無い。
だけど地面には真っ赤な血で染まっていた。
大声をあげて泣き叫んだのは、あの時だけ。
俺の居場所と、将来が消え去った気がした。
彼女にまだ、ちゃんと好きって言えてないのに。
すがるように彼女の手のひらを握る。
小さくて温かいはずなのに、とても冷たい。
ゆるゆると瞼が少しだけ開いた。