あなたに送ったものでした
土曜日、10:00に姉と家を出た。

群馬の自宅からは東京まで3時間弱かかる。

めったに電車にも乗らない私は、高崎で切符を買う時でさえビビっていた。

でも最初電車に乗ってしまえばこっちのもの。

あとは2時間揺られていれば上野に着く。


あとは姉に話をつけておくだけだ。

「ねぇ、ちょっと知り合いに会いたいんだけど」

「東京に知り合いなんていたの?」

「うん、前に高崎でストリートやってた人でね。仲良くなったんだ」

「へー、いいよ。でも私もついて行くね」

「え、何で?来たいの?」

「別に行くないよ。でも東京でお姉ちゃんを1人にしないでよ~」

まぁ、しょうがないか...

「姉も行きます」と、夜さんにはメールしておいた。

すると「全然OKだよ。ところで秋葉原にしないかい?」と返ってきた。

スタジオにでも入ってセッションしたいけど上野にはスタジオが少ないから、らしい。

私は了解、と返した。

その後、姉から「夜さんてどんな人?」攻撃を受けまくった。

身長は?とか兄弟は?とか。

私だってホントは会ったことないんだから知らないよ...

ホームページで得た程度の知識で適当に答えておいた。



今日はあいにくの雨になってしまった。

13:00に秋葉原の約束になっている。

しかし私たちは30分も早く着いてしまった。

駅には目が回るほどの、人、人、人。

慣れない都会に姉と苦笑いしていると、目の前を歩いていたおばさんが傘を落とした。

気付く様子もないので届いたほうがいいのかと私があたふたしていると、姉が傘を拾ってそのおばさんに走り寄った。

おばさんは立ち止まり、「あらっ!ありがとう」と笑顔でお辞儀をして、また歩いていった。

誇らしそうな顔をして帰ってくる姉を目に、私は「なんか出遅れちゃったぞ」という気分だった。


もうすぐ約束の時間だ。

緊張する。

ひょっとして、夜さん来なかったりして。

約束の13:00になった。

でも連絡がない...

5分経ち不安になってきた頃、私の携帯が鳴った。

夜さんだった。
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