僕のイケナイ先生(→『信じられない彼女ー僕のイケナイ先生』から改題)
5時20分になり、指定された
ロータリーに玲緒奈先生が向
っている。

イケ先が、少年達に、何を植え
付けて、どう洗脳し、何を意図
しているのか、およその検討を
つけながら。

二種の言わば上級甲不合格者が
、一種の上級甲合格者の上に立
つ。

女が男を凌ぎ、女王のように、
崇拝され、君臨しようとする。

女総督になりたいと見えたけれ
ど、実は、女王様願望。

昇進でも、給与でも、年功でも
、女が男を凌げる社会ではない
というのに。

男女や年功や免許の格差を減ら
せというならまだしも、イケ先
容子は、無謀なフェミニズムと
言えば聞こえがいいだけで、実
は何か他の野望を持っている。

反対する者は倒れていき、イケ
先の思う壺、それが、この男子
校、立星学園の現実だ。

玲緒奈先生は、そう確信してい
た。

そうとしか、考えられない…

ロータリーでは、先に、実習を
終えたばかりのような、若い橘
由香先生が、待っていた。

挨拶を交わすと、橘先生が、
「横山先生にここへ来るよう
に言われました。よろしくお
願いします」と、おずおず頭
を下げてくる。

30分過ぎてもまだこない。

35分。

晩い。

イケ先、横山容子が、やっと来
た。

車に乗っている。

2人を見るや否や、「さぁ乗っ
て頂戴。橘先生、貴方は後ろ」
とせかした。

取り合えず、やむなく従って、
橘先生が後部座席に、玲緒奈先
生が助手席に乗ると。

「見ている人もいるから、下校
生と違う道を通ります」と言い
ながら、ハンドルを急旋回させ
た。

多弁なイケ先は、饒舌に喋る。

「こちら私の下(ここを強調)
で働いてもらってる橘先生。

こちらは、松先生、緒田先生の
代行で来てます」と言うと、隣
りの玲緒奈先生の方に顔を向け
て。

「実は、松先生の前にも、代行
の先生が、来ていたんですが」
と言って、エンジンをスタート
させ、ギアーをファーストに入
れた。

イケ先は、にやりと笑いながら
、何を思ったか、

「突然、脚が動かなくなったん
ですよ。はっはっ」と今にも声
を上げて笑い出しそう。

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