僕のイケナイ先生(→『信じられない彼女ー僕のイケナイ先生』から改題)
(一の五)書架の秘密
明くる日、放課後のほの暗い図
書室の中。

古い本だけ納める書架の
小部屋に足を踏み入れると。

玲緒奈先生は手にした鍵の束の
音を響かせてどれが鍵穴に合う
か考えあぐねていた。

図書館司書も既に帰っていて、
辺りは、もう人影がなくて、
蒸し暑さに汗ばんでくる。

これも合わない…

これも。

これだわ。

カチっという音がして、施錠が
解けた。

黴のような埃の匂いが鼻をつく


ガラス戸の棚の中に入っている
卒業アルバムを捜して、
手を伸ばす。

ここにも鍵がかかっている。

まるで封印されているかの
ように。

不意に誰かが頬を撫でた気が
したー

『誰?』

気のせいか。

すると、ガラス戸が
カタカタっと音をた
てて、揺れた。

風もなく、人の気配もなく。

空調設備も電源が切れている。

『ポルターガイスト?』と自問
する。

背筋に何だかヒヤっとする
ような感覚が走った。

玲緒奈は、まさかね、気のせいだ
わと今度は小声で自分に言い聞か
せるように呟いた。

軽く深呼吸をして。

学校というのは、生徒たちも教師
も帰宅した後は妙に静まり返って
不気味なものだから。

気を取り直して

一つ一つ小さな鍵をあわせてみて


漸く合う鍵が見つかって。

やっとガラス戸も開いた。





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