愛してるの育て方
「すいません。驚かせる気はなかったんですが」

「い、いえ」

心臓バクバク。
引きつった笑顔で振り返ると、そこには同じ高校の制服を着る女子がいた。

同じ高校ってか、うん、同じクラスの麻木雅。

傘もささずに全身ずぶ濡れで、手に持つスーパーの袋にはドッグフードが入っていた。

犬を守るあの傘は、どう見ても麻木のだろう。



俺は麻木のことが苦手。
いつも一人で、話しかけられても無表情で素っ気ない。

まさかそんな麻木が、野良犬のために雨に濡れながら買い物に行くなんて。

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