愛してるの育て方
餌を与えると、犬は勢いよく食べ始める。
いい食べっぷり。やっぱり動物は可愛いな。

俺はしゃがむ麻木の隣にしゃがみ、二人で犬を見ていた。癒される。


「麻木さーー」

名前を聞こうと麻木の方を見る。
だけど麻木の名を呼ぶことも出来ずにいた。

犬を見て笑顔を浮かべる麻木。
いつも無表情の麻木の笑顔なんて超絶レア。

すごく可愛くて、見惚れてしまった。



「何かご用ですか」

麻木は無表情に戻り、こっちを向く。
俺は赤くなっているであろう顔を隠す為に、麻木から顔を背けた。

あかん。反則。

「あのさー、この子に名前あるのかなって思って」

「どうなんでしょうね。私はつけてませんけど」

「つけないの?」

「私はただ、この子が拾われるまで世話をするだけですから。飼い主でもないですし」

表情は変わらないしいつも通りの淡々とした調子だけど、少しだけ寂しそう。

そんな気がした。

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