愛してるの育て方
「……え!?」

吠える犬のそばにいたのは、地面に倒れ込んだ女子。
うちの学校でこんなに真面目に制服を着こなすのは麻木しかいない。

「麻木さん!?」

駆け寄って名前を呼ぶと、微かに体が揺れた。
そしてゆっくりと起き上がろうとする。

腕に力が入らないのか、その行動はなんの意味も為さなかったけど。

「どうしたの?」

どうすればいいのかわからない気持ちと、本人には悪いけど麻木の行動をかわいく思う気持ちと、両方の感情が生まれた。

「立てないみたいです」

諦めた麻木は起き上がろうとするのをやめて、顔だけこっちに向けた。

その顔は真っ赤。なんとなく瞼も開けにくそうだし、もしかしたら熱でもあるのかもしれない。

「こういう場合は、えっと、病院? それとも学校?」

「しばらく寝れば治ります」

「かと言ってこんなとこで寝かせるわけにもいかないでしょ。
とりあえず保健室連れて行くよ」

「一人で行けます」

俺が抱きかかえようとしたことを察したのか、起き上がろうとする麻木の挑戦が再び始まった。
無理しなくていいのに。全然力入ってないしさ。

「起き上がれないくせにどうやって行くつもり? 連れて行ってあげるからおとなしくしてなよ」

動こうとする麻木を無理矢理お姫様抱っこ。軽い。
麻木は一瞬抵抗を見せたけど、すぐにおとなしくなった。

……やっぱり体が熱い。
仕方ないか。昨日あんなに濡れていたんだし。

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