愛してるの育て方
「…麻木さん?」

意識が朦朧としているのか、焦点の定まらない麻木が服の裾を掴んでいた。
可愛らしい小さな手で。

「おかあさん、いかないで……ひとりに、しないで」

弱々しいその手を解くことなんて簡単だけど、俺にはできなかった。

可愛すぎる。
俺麻木のお母さんじゃないけど、こんなこと言われたらどこにも行けない。

椅子に座り直した俺を、手塚はニヤニヤしながら見ていた。

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