愛してるの育て方



「……瀬戸くん?」

弱々しい声が聞こえてハッとする。
どうやら眠っていたようだ。

「あ、麻木さん起きたの?」

「ええ、まぁ。あの、何で私ここに?」

「公園で倒れてたのを見つけたから連れてきたんだよ」

「……。
そうですか。夢じゃないんですね」

少しだけ顔を赤く染めた。

「ありがとうございました。迷惑かけてごめんなさい」

「迷惑だなんてそんな!」

「私、瀬戸くんが母に見えて…つい、甘えてしまいました」

「むしろもっと甘えてくれてもいいのに」

「そういうわけにもいかないでしょう。
あの、もう教室行ってもらっていいですよ。
私なら大丈夫ですから」

麻木に掴まれていた服の裾は、いつの間にか自由になっていた。

「俺がいたかったからいただけだしね。
まぁでも麻木さんが元気になったのなら安心だ」

俺は立ち上がって伸びをする。
そろそろお昼休みが終わる。いっぱい寝たなぁ。

「あ、そうだ。よかったら犬、うちで飼おうか?」

「! いいんですか?」

麻木がわずかに目を見開く。
俺が頷くと、麻木はほっとしたような、嬉しそうな顔で微かに笑った。

この顔が見たかった。

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