ゾルダート―セルジュの憂鬱(2)
オレの語尾を返せ〜!

語尾の矯正

あれは、ある暑い夏の日だったな〜。そう、オレの存在を否定するような出来事が起きたんだよな〜。




「セルジュ」


「嫌ですよぅ」


「何も言ってないわよ」


「どうせ肩もみでしょぉ?どうせならパウルに頼んでくださいよぉ。オレ、今は忙しくてぇ……」

「そう、アイス食べながら音楽聴いてるのが忙しいの?」


レイ先輩は何の迷いもなく、オレの大切なこだわりのイヤホンを耳から引きちぎったんだよな〜。オレの耳はもげそうになって、くわえていたイチゴアイスは、これもまたぐいと引っ張られて取り上げられたんだな〜。



「いたたたたぁ!何するんですかぁ!」


「話を真剣に聞きなさい」


「分かりましたぁ」


仕方なかったんだよ〜。誰だってそうすると思うぜ〜、きれいな鬼の形相を目にしたらな〜。


「あんた、言葉遣い直しなさい。その小文字の語尾がうっとうしい」


「なんでオレの語尾が『小文字』なんて分かるんですかぁ。ダッシュかもしれないじゃないですかぁ」


「うるさい」


今度はタバコに火をつけようとしたオレの指から、レイ先輩はそれを引き抜いて、あらん限りの力でグリグリグリとヒールで捻り潰したっけな〜。


まずいぃ……言うことを聞かないと、オレ自身がタバコみたいになっちまうぅ……じゃない、なっちまう。


「というわけで、語尾の矯正ね。パウル!」
< 1 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop