不器用な彼の愛し方《番外編完結》
.....しまった。
つい勢いで色々言ってしまった。
「なんですってー?!」
怒りが爆発した様子の女の人は、私に手を上げようとした。
手を振り上げ、今にも私を叩いてきそうな勢いだ。
いつくるかわからない衝撃に構え
目をぎゅっと瞑る。
だけど、衝撃も痛みもこなかった。
「おいばばあ、何してんだよ」
......え。
私を叩こうとしていた女の人の腕を掴む、黒の少年。
「と、うま」
....なんで。何でここにいるの?
そう聞きたい。
でも斗真が纏っているオーラがあまりにも黒くて、聞きたくても口が開かない。
「な、なんですって!?
ばばあとは何ですの!」
斗真は後ろから女の人の手を掴んでいるから、女の人は斗真の顔が見えていない。
だって、斗真の顔が見えていたら
こんな強気な態度とれないと思う。
恐ろしいほどの鋭い眼力。
目だけで人一人殺してしまうのではないかと思うくらい。
「いい大人が高校生相手に手だしてんじゃねーよ」
顔だけじゃない、オーラだけじゃない、声までもが黒い。
地から這い上がってきたような、ドスの効いた声。
「....っ」
女の人は、斗真の声を聞き、恐る恐る後ろを向き斗真を見た。
声も出ない位、驚いているようだ。
それもそのはず。
絶世の美少年が、恐ろしいほどの怖い顔で自分を睨んでいるのだから。