不器用な彼の愛し方《番外編完結》
家の扉を静かに開けると、聞こえてくるあの二人の声。


「あははっ、もうお母さんってば〜!」

「ふふ、それにしても美優花がいないとこんなに清々しいのね」

「ほんとほんと!」



ーーーー悲しい?

いいや、悲しくない。

もう慣れたよ。こんなの。


凶器みたいに飛んでくる言葉には、もう慣れた。

耳を塞ぎたくなるような罵詈雑言には、もう慣れた。




靴を脱ぎ、そっと階段を上る。

そして自然と出てしまうため息。

ため息をつくと幸せが逃げるって言うよね。

でも私には逃げていく幸せなんて
ひとつもない。


はは、なんかそれ笑える。
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