我妻教育2
啓志郎くんは、その人に会釈だけ返し、あたしに苦笑いを向けた。

「構わぬ。きりがない」


ホテルを出る直前、啓志郎くんは手に持っていたマフラーをあたしに被せた。


「啓志郎くんが寒いよ」


「私は大丈夫だ。気にするな。ニューヨークに比べれば、こちらはまだ暖かい方だからな」


くるっとマフラーをあたしの首に巻きつける。


濃紺の、細かい滑らかな肌触り。高価なマフラーっぽい。


深い青色。この色好きなのかな?

あたしも、啓志郎くんに似合うと思ってこんな色のマフラーを編んでクリスマスにあげた。

初心者の編んだざっくり手編みなんかじゃなくて(笑)、これは高級な織物って感じだけど。
< 109 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop