我妻教育2
「ああ。そうだな」

啓志郎くんも街路樹に目を向けて答えた。


道行く人の視線を感じる。

みんなが見ている。啓志郎くんのことを。


憧れるような眼差しを向けられている。

道行く人は、啓志郎くんが何者かは知らないんだろうけど。


倒産しそうな実家と、どうなるかわからない仕事。あたしの重い現実。


啓志郎くんはどんどん高みに上って行く。


あたしも成長するはずだったのにな。

あたしたちの差は広がっていくばかり…。


今、こうして一緒にいることが、分不相応な気がした。

気後れしちゃう。


―なんて考えてたら、前見てなくて、人とぶつかりそうになった。


危ないって思う前に、啓志郎くんにさっと肩を引かれた。
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