我妻教育2
ガラス越しに見えるマダムは、名刺と思われる小さな紙を持って、見たこともないような浮かれた笑顔をしている。


〔上手くやれば仕事の幅が広がるわ〕

と言いながら名刺にキスをした。


〔ビル建てる夢に近づくね、ママ〕

〔そうね、うふふふふふ〕


「未礼ちゃん、まだー??腹減ったよー!早く行こーよー!」

玄関からジャスが大声であたしを呼んだ。


マダムと八暮丹さんが、ハッと扉に目を向けた。

ガラス越しにあたしの姿を確認し、それからお互いに顔を見合せる。

しまった。まさにその一言。気まずい空気をかもし出している。
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