我妻教育2
深く考える間もなく、口をついて出た。

「これまでお世話になり、ありがとうございました」


深く頭を下げ、ロッカーに残った荷物を紙袋に詰め込んで、事務所を出た。


「ちょっと!待ちなさい!!」


必死で引き止めようとマダムは追ってきたけど、振り返らずに歩き続ける。


マダムは、あたしの気が変わらないことを察したのか、すぐに追うのを諦めて、あたしの背中に向かって怒鳴りつけてきた。


「キレイごとだけで仕事はしていけないのよ!!貴女もすぐに分かるわ!!」



マダム座黒は、優雅で年を重ねてもハツラツとしていて、料理研究家としても、女性としても素敵だと思っていた。
< 127 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop