我妻教育2
啓志郎くんが歩くと、次々と周囲の社員が頭を下げていく。

すごい大物っぷり。


啓志郎くんはカフェテリアを見回し、すぐにあたしに気づいた。

立ち上がろうとするあたしを手で制し、こちらに向かってくる。


「待たせたな」


「ううん。ごめんね、忙しいときに」


「いや。大丈夫だ」

あたしの向かいに腰かけながら、啓志郎くんはあたしの顔をじっと覗き込んだ。

「顔色が悪いようだが…?」


「え?…あ、ちょっと寝不足だからかな」


「仕事が忙しいのか?」


「…ううん、えっと、昨日遅くまでテレビ観てたからかも。顔に出るなんてもう年かな」

嘘だけど、あははと適当に笑ってごまかした。
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