我妻教育2
「噂だけどね。マダムにも焦りがあったんだと思うわ。だからって、弟子のレシピを盗用するなんて許されることではないけどね」

厳しい表情で再度息をついてから、あたしの顔を伺う。

「垣津端さん、これからどうするの?」


「まだ、何も…」

考えてない。気弱に答えた。


「―そう。40過ぎた私はもう身動きできないけど、あなたはまだ若い。これから何でも出来るわよ。

料理研究家として世に出してあげるなんて言ってたけど、マダムは私たちを育てる気なんてないわ。

私、安治斉は華がない。未礼は個性がない。ジャスには向上心がない。

マダムは私たちのことをそう言ってバカにしてたもの」

安治斉さんは顔をしかめ、苦笑いした。
< 153 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop