我妻教育2
周囲の迷惑も考えずに、大きな声で呼びかけたあたしに気づいて、啓志郎くんは軽く片手を上げた。


良かった間に合った。


日頃、どんだけ運動不足なんだろう。


息も絶え絶え、心臓破裂しそうだし。膝に手をつき、肩で息をする。


そんなあたしに歩み寄り、「大丈夫か?座るか?」啓志郎くんはベンチに視線を走らせた。


「ううん、大丈夫」

正直大丈夫じゃないけど(笑)


ハーハー言いながら、じっとり汗ばんだ首からマフラーを剥ぎ取る。


あたしとは対照的に涼しげな啓志郎くんは、

「良かった。来てくれて。渡しそびれていて、送ろうかと思っておったのだ」

と、真新しい紙袋を差し出してきた。
< 194 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop