我妻教育2
ちょうどそのとき、ケータイに着信が入った。


啓志郎くんに断って対応する。

電話を終え、

「啓志郎くん、ごめん。色々話したいことあるんだけど、あたしそろそろ行かなくちゃ」

名残惜しい気持ちがするけど仕方ない。


「ああ」

啓志郎くんは、「分かった」と頷き、スーツの内ポケットに手を入れ名刺を取り出し、あたしに差し出した。


「光寿殿の墓参りをすることを目的として帰国したが、我が父から日本での仕事をいくつか任されておる。
一週間は日本に滞在する予定だ。ゆっくり話がしたい。一度、連絡をくれ」



名刺を受け取るとき、かすかに指が触れた。


あたしよりも大きなオトコの指になっていた。
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