我妻教育2
「時計、着けてくれているのだな」

「うん。使ってるよ~。でも、ごめんね。着けるの忘れちゃうときも多くて…。それに細かいキズもたくさんついちゃったし」

「構わぬ。馬蹄のネックレスも変わりないようだな」

「うん。ネックレスもね、仕事忙しくてついつけ忘れそうになる」

肩を竦めて苦笑いした。

母の形見の馬蹄のネックレス。

あたしが落としたとき、啓志郎くんが見つけてきてくれた。


しんみりした。


もう、ここに来ることはないって思ってたから。

啓志郎くんと会うことだって、もうないって…。


5年前、縁が切れた。

取引がある会社同士の政略結婚を破談にしたんだから。

それだけのことをあたしたちは二人で決めた。


破談になったときは、当然だけど、周囲に相当ガッカリされたな。
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