新撰組異聞―鼻血ラプソディ
遠目越しに見える顔は、恥じらうような甘い顔だ。



「おい」


半径30センチ、間を開け声をかける。



俺はすでに心臓がバクバクしている。


「来てくれないと思ってた」


女傑がニコリ、微笑む。



間を詰めようと女傑が足を1歩踏み出す。


俺は1歩下がる。


「話って何!?」


ぶっきらぼうに訊ねる。



指が痺れてくる。

頭がボーとする。


「翡翠くん」


女傑が1歩、近づき頬を染める。



「翡翠くん」


顔が近づく。

がしりっと腕を捕まえられ、体が強張る。


心臓が口から出てきそうなくらい、バクバクドキドキして痛い。



「去年の県大会で、翡翠くんの勇姿観てから、ずっとね……」



あかん……。


女傑から香水の匂いがする。


がしり掴まれた腕が痺れて動かない。


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