新撰組異聞―鼻血ラプソディ
けれど……芹沢を処断しなければ、新撰組は会津藩の信用を失う。
後ろ楯を失っては解散も時間の問題……。



「血塗られた道の先に得るものが、僅かでもあると思いますか」


「!? 俺にそんなこと聞かれても」


「君の世界で、壬生狼士組は歴史に名を刻んでいますか」


「……山南さん!?」


「ダンダラ模様、白く染め抜いた誠の文字、浅葱色の羽織。
羽織のダンダラは忠臣蔵の赤穂浪士が吉良邸に討ち入りしたときに着ていた羽織の柄です。
浅葱色は武士が切腹のときに着る裃の色です。
その思いを込めた隊服に恥じない生きざまをしたのでしょうか?」


「何を迷ってんのか知らんけど……護るべきもの、護りたいものがあんのやろ?
どうしても譲れんと思うほどの」


山南さんは何も言わない。


「手や隊服をいくら血に染めても、心の中まで、魂までも血に染めへんかったんが新撰組やって、俺は思てるけど」


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