新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「信太……さん」



カーーーン。
いきなり、甲高く障子戸を思い切り開く音が響く。



「山南さん!? 何をしてるの」



山南さんは、俺から慌てて離れる。



「眠れずに廊下へ出たら、何やら不穏な話声がするから来て見れば、まさか、まさかの……山南さんが翡翠を!?」


「歳さん、違いますって……」


「抱きあってましたよね。今、翡翠と山南さん……抱きあってましたよね」


「ちゃいますって……目隠しが緩んで直してもろてただけやから、ねぇ山南さん」


俺は咄嗟に誤魔化す。



「ええ……目隠しを」



「怪しい。『泣くときは思い切り泣くもんや』とかって翡翠の声がしてた気が」


うわっ、バレてるやん!?
おもっきり、聞き耳立てて聞いてはったんや。


「聞き間違いちゃいます? 俺、自慢やないけど抱きつかれたら、震えるし鼻血が止まらへんくなるし」



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