新撰組異聞―鼻血ラプソディ
近藤は芹沢が立ち上がるのを見て後を追う。

芹沢は縁側に立ち、雨の降る庭を見つめる。


「芹沢さん……」

近藤は声をかけて近づき、松平容保から賜った書状を広げる。


「松平容保様より頂いた新しい名前、どう思われます?」


「会津公から……何故わたしに訊ねる?」


「筆頭局長ですから」


「名前など……会津公に賜った名に文句など言えない」

芹沢は興味無さげに溜め息をつく。


「芹沢さん、あなたに話さねばならぬことがあります。実は……」

近藤は今しか、芹沢に計画を話す機はないと腹を決めた。


「近藤……あんたは甘いよ」

近藤の頬に、鉄扇をヒタヒタと当てる。


「侍になりてぇなら鬼になんなきゃ……遠慮はいらないよ」


「……芹沢さん」


「新撰組、いい名前だ」

障子の向こうで影が動いた。

近藤は2人の様子を 土方が探っているのだと思う。

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