新撰組異聞―鼻血ラプソディ
「近藤さん、紅葉……観に行ってごらんよ。嵐山もいい感じだろうね」

近藤は何も言わなかった……言えなかった、ただ頷いた。


「……帰るわ」

酔いが回り、取り巻きに肩を支えられて尚、ふらつく足元を踏みしめ、芹沢は茶屋を出る。

土方は井上に近づき、「源さんは近藤さんを見張っていてください」と早口で耳打ちし更に、山南に目配せを送ると、さりげなく茶屋を離れた。

後ろから数名の足音がする。

路地の角を曲がった所で、黒い影が、サッと行く手を遮る。


「何をしている」

高くかざした提灯の光に、斎藤の顔が浮かび上がった。


「通すわけにはいかない。芹沢さんは殺させない」


「一子、あんたと争いたくない」

斎藤は音も立てず、刀を抜いた。


「しょうがないわね」

原田が舌打ちをし、抜刀する。


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